【RX-8はもっと評価されるべき車】ロータリー車の異端児
不遇な扱いを受けた名車はいくつもありますが、マツダのRX-8はその一台ではないでしょうか。メーカー側としては創意工夫を凝らした意欲作でしたがRX-7ほどの名声を残した感じではなく、ロータリーカーとして疑問の声もありました。今回はそんなRX-8の魅力と惜しかった箇所を振り返ります。
RX-8とは?
RX-8はマツダのスポーツカーであり、これまでのRX-7とは別コンセプトのロータリーカーとして2003年に発売されました。RX-7は排ガス規制などの影響で2002年に惜しまれつつ生産中止となりましたが、その後継としてRX-8にも大きな期待が寄せられました。各種自動車メディアでも大きく取り上げられ、5000台を超える予約があったようです。
▼「RX-8とは」マツダ公式サイト
マツダ100周年サイト|歴代のマツダ車 – RX-8|マツダ (mazda.com)
RX-8のルックス

RX-8は外見も中身もRX-7とはかなり異なっていました。外観の最大の違いは4ドアになったことでしょう。しかも観音ドアで、突拍子もないアイデアに度肝を抜かれた人も多いと思います。4ドア化したことで全体のボリュームも増し、エクステリアもふんわりした雰囲気になりました。前後フェンダーが動的に強調されているのが特徴です。さらにRX-7シリーズでは定番のリトラクタブルライトも廃止されました。

しかし、後ろ姿はCピラーやリアガラス周辺の造形にFD3Sの面影が感じられます。こうしてみるとFD3Sの低く流麗なスタイリングが改めて確認できます。RX-8も車高は低い方ですが、FDと比較するとやや腰高に見えます。FD3Sとの違いは数値で比較するとよく分かります。RX-8の3サイズはいずれも拡大され、ホイールベースは大幅に延長されました。また車重もRX-7より約100kg増えました。

中身の最大の変更点は自然吸気化でしょうか。レネシスと名付けられた新型ロータリーエンジンは従来のターボに及ばないものの、急戦回転を許容する高回転型になり馬力はFD3Sと遜色ない数値を実現しました。また価格はFD3Sと比較するとかなり安価に抑えられていました。ちなみに、RX-8は全く異なる新世代ドアスポーツカーと位置づけており、RX-7の後継モデルとはしていません。そのネーミングには新しいジャンルのスポーツカーを想像したいという思いが込められたようです。
一風変わったキャラクターで登場したRX-8でしたが、蓋を開けてみればかなり好調に揺れました。生産開始から1年半で生産台数は10万台を超え、これは世界中で大ヒットしたNA型ロードスターとほぼ同じ勢いです。RX-8は意外にも、販売当初はかなりヒットしたのですね。また、カーオブザイヤーをはじめ、各賞の受賞数が多いこともトピックです。
世間からの評価
順調すぎるほどのスタートを切ったRX-8でしたが、不景気とエコ重視の時代背景もあって人気は次第に低迷しました。当時の販売台数ランキングを見てみると、上位には小型車などが並びます。2009年には3代目プリウスが登場し、その後はアクアと共にハイブリッドの時代を築き上げたのはまだ記憶に新しいです。RX-8はマイナーチェンジを受けるも、売行きは回復せず、2012年に遂に生産終了になりました。晩年に近い2010年の世界販売台数は約2900台で、最盛期から実に約95%もダウンしており、スポーツカーブームは既に去っていました。
そしてモデルチェンジされることなく、一代限りで10年間のライフに幕を下ろしたのでした。また、これに続くロータリーエンジン車も発売されず、1967年から続いたロータリーの歴史に終止符を打つことになりました。
人気を維持できなかった理由として、一説には独特なフォードアスタイルや重量増によって、スポーツカーなのかファミリーカーなのかイメージが中途半端になったという声が聞かれます。また、燃費の悪さやNA化によるパワー不足も指摘されています。これらの真偽はさておき、マツダがなぜフォードアパッケージを採用したかと言えば、当時の親会社フォードとの関係性が大きな要因だったようです。マツダはバブル期に行き過ぎた拡大路線を取ったことで経営難に陥り、提携先だったフォードの傘下に入りました。

フォードはロータリーエンジン車の開発自体は容認しましたが、ドア数は4枚以上にすべきことを要求しました。米国における2ドアスポーツカーの需要低迷やスポーツカーの保険料高騰が原因だったようです。これに対し、マツダの技術者は反発しました。
観音開きドアは決して奇抜なものではなく、その中の最善策として具現化されたアイデアだったことが分かります。ドアという条件を満たしつつ、センターピラーを省略することで大型化と重量増を最小限に抑えたのですね。NA化にも血の滲むような苦労があったようです。実はマツダはFD3S発売直後から自然吸気ロータリーエンジンの開発を進めていたとのこと。ロータリーターボエンジンでは排ガスや燃費といった環境対応は限界があるため、早期からNAを開発していたのですね。
新時代のレネシスエンジンはサイドポート式への変更やそれに伴う各種改良により、自然吸気ながら最高出力250馬力を誇り、排ガスや燃費性能も大きく改善されていました。2002年には歴史的な排ガス規制が施行されましたが、これをクリアするために多くの苦労があったことが想像されます。
ということで、RX-8の開発の裏にはいくつかの障害があり、関係者が最適解を追い求めた結果、独特な4ドアスタイルやレネシスエンジンだったことが分かります。マツダの執念ですね。また、運動性能の高さもRX-8の強みです。当時のプレスリリースを見てみると、フロントミッドシップや前後重量配分、ボディ構成といったキーワードが並び、運動性能の高さが大々的にアピールされています。特にフロントミッドシップは肝入りで、エンジンをFDよりも低く、かつ後方寄りに配置できたことがこれでもかと説明されています。

補給機も小型軽量化され、レイアウトも見直され、燃料タンクもホイールベース内に移動するなどの設計。ヨー慣性モーメントはFDより5%も低くなり、優れた回頭性を実現しました。興味深いのは、絶対的な性能やドア数よりもレイアウト特性の方が強調されている節があることです。プレスリリースの冒頭でも、開発担当者が「スポーツカーファンを唸らせるハンドリングこそが、私が本当に誇りたいRX-8の魅力」と大きく主張しています。RX-8の真骨頂は、重心物を徹底的に中央に集めたことによる運動性能の高さなのかもしれません。
最後に
RX-8を最後にロータリー車の後継車がなくなってしまいましたが、2023年にはロータリーエンジンを発電地として使用するMX30ロータリーEVが登場しました。あくまで発電用ですが、どんな形であれロータリーエンジンが観車に搭載された事実はファンにとってとても嬉しいことです。環境対応のニーズは強まるばかりですが、いつかまたロータリースポーツが登場することを願ってやみません。
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