なぜコルベットC8はミッドシップ化したのか
シボレー・コルベットはアメリカを代表するスポーツカーのひとつであり、2019年に新型として発表されました。そんな車ですが最大のトピックスはエンジン搭載位置が長年貫き通してきたフロント(FR)からミッドシップ(MR)に変更されたことです。なぜコルベットの伝統として続いたFRをやめたのでしょうか?
車の駆動方式について

駆動方式には4WDや2WD、FRなどさまざまな種類があります。駆動方式とは、エンジンの動力をタイヤに伝える方法で、駆動方式にはFF(前輪駆動)やFR(後輪駆動)などの種類があります。たとえば、FFは「フロントエンジン・フロントドライブ」で、エンジンと駆動輪がともに車両前方に設置されています。一方のFRは「フロントエンジン・リアドライブ」で、エンジンが前方に駆動輪が後方にあるタイプです。駆動方式は大きく分けて5種類ありますが、今回は本記事で主となる「FR」と「MR」について解説します。
FR(フロントエンジン・リアドライブ)

FRは操舵と駆動が分かれているため、スムーズなステアリングと小回りに優れた軽快な走りを実現できます。またF前輪の位置を自由に設計できるため、フロントオーバーハングを短くした美しいプロポーションも魅力のひとつです。そして、縦置きにしたエンジンやトランスミッションなどを直線状に配置するため、伝達効率が良く効率的な走りを実現できます。
MR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)

MRはエンジンをFRよりも後輪側に設置しています。前輪と後輪の重量バランスに優れるため、加減速に強く高い運動性能を実現できます。エンジン音も大きくドライビングスキルも必要となるため、多くの場合スポーツカーやレーシングカーに採用されます。
FRでは限界を感じた

開発陣によると「先代コルベットの最高モデルだったZR1は最高出力766PSにも達しました。これはFRレイアウトで受け止められる出力として限界を極めたと感じました。そこで、それを上回るパフォーマンスを実現するためにはミッドシップ化しかないという判断になりました。」とコメントしており、さらなる高性能化を進めるためにMRの道を歩んだのでしょう。
欧州勢に勝つには
ミッドシップは重量物であるエンジンが車体中央近くに積まれるため、前後バランスに優れており、旋回性が高くなります。しかも、駆動輪であるリヤタイヤにより大きな荷重がかかることから、タイヤのグリップ力を引き出ることにもつながります。つまり、大きな出力をより受け止めることができるようになるのです。
フロントエンジンのままなら4WD化も案でありましたが、重量がかさむという欠点があります。これが世界のスーパースポーツカーがミッドシップを採用する理由であり、コルベットもそこに着目したのでした。また、そこにはWECなどで戦うコルベット・レーシングからの要望もあった可能性もあります。
MR化は既に決まっていた
モータースポーツの実戦でフェラーリ「488GTB」やレース用はミッドシップ化されているポルシェ「911」といったモデルと戦うには、FRで限界がきていたのはおおよそ分かっていたのでしょう。
MR化の案については2014年には既に試行されており、ミッドシップの試作車でテストが行われていました。つまり、先代のC7型が登場した際にはミッドシップ化は決定していたことになります。
またこれからのモータースポーツではモーターを用いたハイブリッド化も考えられるため、それを踏まえてもMRの研究は必要だったかもしれません。そのためかC8にはハイブリッドモデルが作成されており、今後のハイブリッド車を見据えた存在になっているでしょう。
最後に
FR車として続けていたアメリカンスポーツカーがMR車に変更するのは大きな決心が必要だったと思いますが、そこにはモータースポーツに対する熱い考えがありました。FRを極めたからこその次なる道が開けたのでしょう。
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