トヨタ・100系チェイサーの魅力

トヨタのセダンモデルと言えば何を考えますか?トヨタ史において多くの種類のセダンが生産されましたが、今回はあの時のスポーツセダンとしてトヨタ100系チェイサー(6代目チェイサー)を紹介します。平成初期の車ですが今でも根強いファンが多く、特にツアラーVグレードの印象は強いと思います。中古車も300万円から400万円台の車両が確認され、相場はかなり高い水準です。

トヨタ・チェイサーとは?

チェイサーは1977年から2001年まで生産していた中型乗用車で、マークII/クレスタとは兄弟車になります。ボディーやエンジンはマークII/クレスタの2車と基本的に共通しています。ラグジュアリーグレード名はX60系から「アバンテ」、スポーツグレードはX70系~X80系までは「GT」、90系からは「ツアラー」です。チェイサーを取り扱っていたトヨタオート店(ネッツ店)はセダン車種のラインナップが手薄であったため、他の兄弟車と異なり4気筒エンジン搭載の廉価グレードも充実していました。

初代チェイサー

初代チェイサー(X30/40系)は1977年にデビューしました。当車は同クラスの人気車種だった日産・スカイラインの対抗馬として開発されたため、マークIIよりも若いユーザーを狙ったものでした。歴代で唯一の2ドアハードトップも存在した車であり、当時のテレビCMには草刈正雄が出演していました。

6代目チェイサー

6代目チェイサー(X100系)は1996年に登場しました。この型のマークII/チェイサー/クレスタにはそれぞれのキャラクターが与えられ、その中でチェイサーはイメージキャラクターにホオジロザメが使われました。エンジンはガソリンとディーゼルがあり、変速機もAT・MTの両方が設定されました。

100系チェイサーのデザイン性

フロントデザイン

チェイサーのすっきりと洗練されたフロントマスクは、今見ても色あせないかっこよさがあります。若すぎず渋すぎず、程よいダンディーさがあり、「イケオジ」という表現がいいかもしれません。開発段階ではボンネットまで繋がった丸目二灯の案もあったようで、当時のジャガーXJRやメルセデスEクラスに近いイメージでした。しかし結果的に丸目ライトはガラスの内側に収められて、意外と落ち着きのあるデザインになりました。当時のBMW・5シリーズなどと共通するデザイン手法と思われます。

サイドデザイン

サイドはシンプルで張りがあって、オーソドックスなセダンルックスが印象的です。現代のセダンはルーフからトランクまでなだらかに繋がるクーペ系シルエットが主流です。しかし、チェイサーは今の車とは対照的ですが、真四角なトランクや力強く立ち上がるCピラーの造形などは美しさを感じます。車の基本的な形を再認識させられますね。

リアデザイン

リアは張りのあるボディーを締め上げる彫刻的フォルムで、欧州車のような雰囲気です。開発陣によればライトのレンズにもこだわっており、ツアラーモデルには深みのある赤を採用したとのことです。さらに、ツアラーモデルには立派なリアスポイラーも標準装備されており、高級感とフレッシュさが合体した、攻撃的な後ろ姿になっています。チェイサーのスポーツ性は低くて軽量なスポーティーさではなく、がっしりとした塊感によって大人にふさわしいスポーツテイストが表現されています。デザインモチーフはホオジロザメとのことで、洗練されていて力強い雰囲気にはぴったりの動物でしょう。

100系チェイサーのスペック

チェイサーには複数のエンジンが設定されましたが、トピックはツアラーVに搭載された2.5L直6ターボの1JZ-GTEエンジンでしょう。280馬力のパワーはもちろん、自然吸気なら4Lに匹敵する38.5kgmの最大トルクを発生するハイパフォーマンスぶりがこのエンジンの魅力です。さらに、シリンダーヘッドにはVVT-iと呼ばれる可変バルブタイミング機構を搭載しました。これにより全回転域で連続して吸気バルブのオーバーラップ量を変化させることが可能となり、出力特性と燃費性能の向上につながりました。

セダンとは車の基本系

高級セダンをスポーツカー顔負けのパワーエンジンで飛ばす快感が、チェイサーの醍醐味でしょう。紳士さと獰猛さが合わさりちょいワルのようなイメージで、当時の男性を取り込みました。そして、この車にはFRレイアウトとマニュアルミッションを言及しないわけにはいきません。当時はホンダをはじめFFの利点が持てはやされ、トヨタもFFセダンとしてウィンダムやアバロンを展開していました。しかし、マークシリーズはFRの高級セダンとして後輪駆動にこだわり続けました。8代目マーク2の開発陣によれば、車の基本形はセダンであり、セダンの本質はFRであるとコメントしました。そのため、マーク2シリーズはその王道を行く存在となったのです。

FRだからこその楽しさ

FR車の楽しさとして、プロペラシャフトを介して後輪に伝わるトルク感やアクセルを踏むときの挙動とともに発進する味わいがあります。車好きにはたまらない要素でありますが、実はチェイサーには5速マニュアルの設定があったというのも驚きです。ツアラーVのマニュアルがチェイサー全体の販売台数の約3割も占めていた時期があったとのこともあり、マニュアルのツアラーVというイメージをお持ちの方が多いのも理解できます。

マーク2とクレスタ

ツアラーVの価格は222万円からということ、今考えると良心的な設定です。一方、チェイサーのエントリーモデルはなんと約202万円からで、この車が200万円で購入できるのは考えられないと思います。

トヨタのセダン3兄弟車

ここでチェイサーをはじめとする三兄弟を振り返ります。マーク2、チェイサー、クレスタの3車種は、エンジンやプラットフォームを共用する兄弟モデルであり、クラウンの次に位置する上級志向のセダンです。当時は「ハイソカー」という呼び方もあり、この3兄弟は昭和を代表するヒットセダンでした。

平成不況における経営戦略

しかし、時代は変わるもので100系が登場した1996年といえば平成不況の時代でした。ハイソカーやデートカーよりも実用車が重宝され始めました。1996年のランキングを見ると、マーチ、スターレット、オデッセイといったモデルが並びます。

100系チェイサーの開発陣はトレンド変化によってセダンの販売が落ち込むことを危惧していました。その対策として、似たりよったりなイメージだったセダン3兄弟それぞれに個性を与えて個々の魅力をアピールする戦略が取られたのです。マーク2は王道FRセダン、チェイサーはダンディーなスポーツ系セダン、クレスタはエレガントさを求めた都会派セダンといったイメージです。

こういった背景もあって、チェイサーはさらにスポーツ寄りの位置付けになりました。回頭性を高めるために前後のオーバーハングが詰められたり、メッキモールなどの加飾を控えて硬派なイメージを映し出すといった差別化によって、マーク2やクレスタとは異なる車種になりました。

最後に

100系チェイサーの魅力をまとめます。まずはデザイン性です。マーク2やクレスタとは全く別系統の洗練されてスポーティーな見た目は、100系チェイサーならではのかっこよさです。面構えも美しくてキャラクターラインに頼らないシンプルで張りのあるボディ面は、オールドスクールなセダンシルエットを感じさせます。

次は「FRの5速MT」というパッケージ性と車自体のスペックです。スポーツカーも驚くようなハイパフォーマンスエンジンをブンブン回して、優雅に走るのではなくやんちゃに楽しめるのもチェイサーの魅力です。こんな車を開発したメーカーの大いなる遊び心も感じられ嬉しいです。そして、ハイパワーなFRセダンというだけで十分ですが、それをマニュアルで操れるのは車好きの心をつかみます。今となっては過去の名セダンとなり、貴重な車だったのだと思わずにはいられません。

現在、このようなセダンは少ない傾向であり時代の流れを感じます。日産スカイラインは継続して生産されていますが500万円という価格帯であるため、かつてのように多くの車好きが購入できる代物ではありません。100系チェイサーのようなFRセダンが再び現れる日は来るのでしょうか。

Follow me!

YouTubeチャンネルのお知らせ

本記事をお読みいただきありがとうございます。

本サイトは車関連の記事を投稿していますが、Youtubeでも投稿活動を行っています。興味のある方は是非、YouTubeチャンネルもご覧になってください。