GT-R50イタルデザインが「ダサい」と言われる理由

GT-R50は日産とイタルデザインのコラボ車であり、限定車のため希少価値が高い車です。そんなGT-R50は見た目がダサいと評されていますが、一体なぜでしょうか?

GT-Rイタルデザインとはどんな車なのか

GT-R50 by Italdesignは、日産とイタリアのカロッツェリア「イタルデザイン」が共同で開発した限定モデルであり、日産GT-Rの誕生50周年、そしてイタルデザインの創立50周年を祝う目的で企画されました。GT-R50のベースとなっているのは、R35型GT-Rの「NISMO」モデルで、そのパフォーマンスをさらに引き上げた仕様となっています。外観はもちろんのこと、エンジンやサスペンション、インテリアに至るまで徹底的にモディファイされており、価格は約1億円超。台数もわずか50台限定ということで、その希少性も群を抜いています。イタルデザインは、ランボルギーニやアルファロメオ、フォルクスワーゲンなど数々のブランドとのコラボレーションを行ってきた世界有数のデザインスタジオです。そんな彼らがGT-Rという日本の象徴的スポーツカーを手がけたことは、まさに歴史的な試みとも言えるでしょう。

GT-R50の技術的特徴

エンジンは3.8L V6ツインターボ「VR38DETT」をベースに、GT3レース車両用のターボチャージャーや高流量インジェクターを導入し、最高出力は720PS、最大トルクは780Nmにまで引き上げられています。これは、標準のGT-R NISMO(600PS)をはるかに凌駕するスペックであり、まさに「走るアートピース」とも言える存在です。インテリアには、カーボンファイバーやアルカンターラ、イタリアンレザーといった高級素材を惜しみなく使用し、デザインと機能性が高次元で融合した空間を演出しています。

GT-Rイタルデザインがダサいと言われる理由

従来の伝統的なデザインと異なる

R35型GT-Rは、その武骨で直線的なラインが特徴的であり、多くのファンが「機能美」として評価してきました。しかし、GT-R50ではこの路線を大きく離れ、流麗で未来的、かつ彫刻のようなボディラインが採用されています。この変化はデザイン的には非常に洗練されているものの、既存のGT-Rファンには「別の車に見える」「GT-Rの精神を失った」と感じられることが多いようです。特に、GT-Rというモデルが持つ“機能性から生まれたデザイン”を美徳とする向きにとって、GT-R50はあまりに芸術的・装飾的に映ってしまうのです。

テールランプが奇抜

伝統的なGT-Rといえば、四つの丸型テールランプがトレードマークです。これはスカイラインGT-R時代から続く象徴であり、それがあるからこそGT-Rと認識されるファンも多いです。しかし、GT-R50ではこのテールランプがリング状の“空洞を囲む”デザインへと変更されました。これにより一部ファンからは、「ポルシェのよう」「SF映画に出てくるコンセプトカーみたい」といった声も聞かれ、従来のGT-Rらしさが損なわれているとの批判が見受けられます。

配色のアクセントが過剰

GT-R50最大の視覚的特徴ともいえるゴールドアクセントですが、この色使いが好みを大きく分けています。イタルデザインらしいヨーロピアンなセンスにあふれている一方、日本国内やアジア圏では「ギラギラしている」「成金趣味」といった否定的な印象を持つ人も少なくありません。ボンネットのセンター部分やリアディフューザーなど、通常ではあまり色を使わない部分にゴールドを配しており、それが一部の人には“やり過ぎ”と感じられてしまうようです。

ジュネーブモーターショーでの批判

2018年のジュネーブモーターショーにてGT-R50が初披露された際、多くの来場者の注目を集めましたが、その評価は賛否が分かれるものでした。欧州メディアの一部では「これまでのGT-Rの進化の中でも最も革新的」と評される一方で、日本の一部ジャーナリストからは「GT-Rとしてのアイデンティティが不明確」「イタルデザインにデザインの主体を譲り過ぎた」といった懸念も表明されました。このように、GT-R50はその特異性ゆえに、従来の価値観と新しい価値観のはざまで揺れる存在となっているのです。

GT-Rイタルデザインの立ち位置を再考する

GT-Rは、R35型が登場して以降、数々の特別仕様車や限定モデルが登場しています。その中には、性能を突き詰めたハードコアモデルもあれば、特定のテーマに沿って洗練された意匠を纏ったモデルもあります。ここでは、GT-Rイタルデザインと比較されがちな他の限定GT-Rをいくつか取り上げ、その違いを明確にしていきます。

GT-R NISMO:パフォーマンスの頂点を追求するモデル

GT-R NISMOは、日産のモータースポーツ部門であるNISMO(ニスモ)が手掛けるフラッグシップモデルであり、サーキットで鍛え抜かれた性能をストリートに持ち込んだ究極の一台です。NISMOモデルは“機能性の追求”に主眼を置いており、見た目も無駄を削ぎ落とした「実戦仕様」的なテイストが強いです。それに対してGT-R50は、あくまでビジュアルの革新性やブランド価値の演出に重きが置かれており、目的が根本的に異なります。この違いが、一部のファンから「GT-R50は見た目だけ」と捉えられる一因にもなっています。

特徴

  • 軽量化されたカーボン製ボディパーツ
  • レース仕様をベースとしたサスペンションチューニング
  • VR38DETTエンジンの出力向上(600PS)
  • 内外装はあくまでGT-Rの世界観を踏襲

GT-R Premium Edition T-spec:ラグジュアリー志向の特別仕様

T-specは、GT-Rの走行性能に加えて、上質な装備やカラーリングによる“特別感”を演出する仕様で、2021年に登場したモデルです。T-specは歴代GT-Rファンを意識した“伝統回帰”的なアプローチであり、「懐かしさ」と「現代的な質感」の融合を志向しています。対してGT-R50は、過去の要素を断ち切り、新しい価値観の提案を意識した“前衛的モデル”であり、この違いが「らしさ」を重視するユーザーからの反発を生んでいる面も否めません。

特徴

  • ミッドナイトパープルやミレニアムジェイドといった復刻カラー
  • 特別な鍛造ホイールやカーボンブレーキ
  • スポーティかつ上品な内装仕上げ

GT-R SpecV(2009年):軽量・高機能に特化した通好みの一台

SpecVは、2009年に登場した軽量ハイパフォーマンス仕様のGT-Rで、NISMOとの関わりも深いモデルです。SpecVは玄人向けのピュアスポーツGT-Rであり、飾り気よりも“走る楽しさ”に全振りした硬派な仕様です。GT-R50はその対極にある“アートピース”としての側面が強く、エンスージアストの一部には「スペック偏重じゃないGT-RなんてGT-Rじゃない」とまで言う人も存在します。

特徴

  • カーボンセラミックブレーキ装備
  • 後部座席廃止による軽量化
  • 専用サスペンションと専用セッティング

GT-Rというブランドのジレンマ

GT-Rイタルデザインが「ダサい」と言われてしまう背景には、こうした歴代の限定GT-Rとの明確なスタンスの違いがあります。GT-Rというブランドは、常に“技術の日産”を象徴する実用的なモンスターマシンであり、見た目の派手さよりも中身の充実度が評価される傾向があります。GT-R50は、その真逆を行くアプローチです。性能を高めつつも、明らかに「見た目のインパクト」と「限定性」「アート性」に比重を置いています。これは、他のGT-Rが築いてきた“無骨な魅力”とは異なる文脈で評価されるべき車ですが、既存ファンにはその違和感が「ダサい」と映ってしまったのかもしれません。

まとめ

GT-R50 by Italdesignは日産とイタリアのデザイン会社・イタルデザインの共同によって誕生した、非常に希少価値の高い限定モデルです。R35型GT-Rをベースに、50周年の記念として製作されたこのモデルは、その価格、仕様、外観において既存のGT-Rとは一線を画す存在となりました。しかしながら、その独特で先鋭的なデザイン、特にゴールドアクセントや未来的なテールランプ、そして大きく変化したシルエットなどが、従来のGT-Rファンの間で賛否を呼んでいます。「GT-Rらしさがない」「原点を忘れている」「派手すぎる」といった否定的な意見は、特に保守的なファン層から多く聞かれます。これは、GT-Rというモデルが長年にわたり築いてきた“無骨で機能的”なイメージが強く根付いているからに他なりません。一方で、GT-R50はデザインの進化、ブランドの象徴としての役割、新たな価値観の提示を担った存在でもあります。その希少性とクラフトマンシップ、ハイパフォーマンス性は確かに“GT-Rの新しい未来”を示す試みであり、コレクターや新世代のファンからは高い評価を得ています。また、NISMOモデルやT-spec、SpecVなど、他の限定GT-Rと比較することで、GT-R50の「異質性」や「立ち位置の特殊さ」がより明確になります。それぞれのモデルが異なる価値観やユーザー層を想定して設計されていることから、GT-R50を従来の価値基準だけで評価するのは適切ではないとも言えるでしょう。結論として、GT-Rイタルデザインが「ダサい」と言われる背景には、デザイン面の好みの問題だけではなく、GT-Rという車に対する“期待像”や“伝統観”とのズレが大きく影響していると考えられます。とはいえ、それこそが革新であり、GT-Rというブランドが持つ多様性を象徴するひとつの表れでもあるのです。GT-R50は、これまでにないアプローチでGT-Rというアイコンに新たな光を当てました。時代が変わる中で、こうした挑戦がなければブランドの成長もないのかもしれません。「ダサい」と言われることさえも、ある意味ではその革新性の裏返しと言えるのではないでしょうか。

Follow me!

YouTubeチャンネルのお知らせ

本記事をお読みいただきありがとうございます。

本サイトは車関連の記事を投稿していますが、Youtubeでも投稿活動を行っています。興味のある方は是非、YouTubeチャンネルもご覧になってください。