ランボルギーニが燃える原因と事故の実態

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ランボルギーニの「炎上」は、SNSでの拡散力も相まって、実態以上にセンセーショナルに映りやすい話題です。しかし、整備の行き届いた個体が突然“勝手に”燃えるわけではありません。背景には、高出力・高温環境というスーパーカー特有の条件、部品の不具合や整備不良、そして外的要因(事故・いたずら・放火)まで、複数の層が重なっています。本稿では、公開情報や各種リコール資料をもとに、原因・事例・リスクの背景・予防策を整理し、オーナーとファンの双方にとって実務的な視点を提示します。

ランボルギーニが燃える主な原因

車の炎上(出典:当サイト)

エンジンの高温による発火

ミドシップのV10/V12や、UrusのV8ツインターボは、発熱量がきわめて大きく、後部に凝縮されたレイアウトでは熱がこもりやすくなります。走行直後に停車・エンジン停止すると、冷却風が途絶えて部品温度が一時的に上がる「ヒートソーク」が発生します。学術研究でも、停車直後の数百秒で放射・対流が卓越し、熱に弱い周辺部材(配線・樹脂ハウジング・ホース)が劣化しやすいことが示されています。(スプリンガーリンク, sae.org, サイエンスダイレクト)
とくに後方の排気系・触媒付近は高温で、樹脂やゴムの長期耐熱が課題になりがちです。これはスーパーカーだけでなく内燃機関車全般の「車室外・エンジンルーム火災」の共通論点でもあります。(tsapps.nist.gov, mvfri.org)

  • 渋滞やサーキット走行後の即時エンジン停止は、ヒートソークを強める傾向があります(一般論)。(スプリンガーリンク, sae.org)
  • 後方排気の近傍に後付け部品(遮熱が不十分な社外パーツ)があると、局所的な熱集中を招きやすいです。(static.nhtsa.gov)
  • 熱で硬化・割れたホースや配線被覆は、二次的に燃料やオイルの滲みと結びつくとリスクを高めます(一般論)。(サイエンスダイレクト)

燃料系のトラブル

実際のリコールでもっとも多いのが燃料系です。たとえばAventador(2012–2017)は、満タン状態+特定の取り回し条件でEVAP(蒸発ガス処理)に液体燃料が回り、未処理の燃料蒸気が高温ガスと接触しうるとして世界的リコール(17V-073)が公表されました。Aventador JやVenenoも対象で、5873台に対しEVAPシステムのアップグレードが実施されています。さらに社外マフラーの装着でリスクが増す旨も明記されています。(static.nhtsa.gov)Urus(2019–2020)では、エンジンルームの高温で燃料ラインのクイックコネクターが損傷し燃料漏れに至る可能性があるとして、コネクター交換のリコール(20V713)が発表されています。(OEMDTC, Cars.com)Huracán(2020–2022 EVO/2022 STO)は、ギアボックスのオイル量不足が原因でクラッチスリップやギアベントからのオイル噴出→熱い排気系で発火リスクというシナリオが想定され、補正作業のリコール(22V-220)が告知されています。

  • 「満タン時の過充填を避ける/強い燃料臭→運転中止」が、Aventadorの通知文にも具体的に書かれています。(static.nhtsa.gov)
  • Urusは設計耐熱を超える環境で樹脂系コネクターが弱るため新設計部品に交換しています。(OEMDTC)
  • Huracánはトランスミッションオイル管理がポイントです。

電気系統のショートや不具合

電装のショートやコネクター不良は、車両火災の一般的な着火源のひとつです。乗用車火災を俯瞰したレビューでも、配線・ヒューズ部の発熱・短絡は重要因子として扱われます。高温環境で被覆が劣化していれば、スパーク→可燃ミスト着火のリスクは理論上上がります。(スプリンガーリンク)
ただし、個別の炎上動画=電気系が原因と断定するのは危険です。現場検証がない限り、燃料・潤滑油・外的要因など複合の可能性を常に考えるべきです(後述のロンドンやボストン事例でも原因未特定の扱いが多数)。(Carscoops, The Drive)

実際に起きた事故の事例

車の炎上(出典:当サイト)

走行中に炎上したケース

2025年8月、インド・BengaluruでAventadorの後部が出火。オーナーと周囲の人々が初期消火し、けが人なし・車両は軽微損傷と報じられました。動画が拡散し議論を呼びましたが、原因は公表段階で特定されていません。過大な憶測でメーカーや個体差を断罪しない冷静さが求められます。(The Times of India, www.ndtv.com)2018年には米国ボストン中心部でHuracánが燃え、消防が消火。これも人的被害は報告されず、原因は不明のままです。都市部の路上は可燃物(路面油膜・落下物)や風向の影響も大きく、現場要素のウエイトが高いことを再認識させる例でした。(The Drive)

  • “走行中の火災”は、機械起因だけでなく事故(縁石接触→アンダーカバー破損→液体接触)や外的要因も絡みえます。報道だけで単因子に収斂させない姿勢が大切です。(スプリンガーリンク)
  • SNSは現象の派手さを強調しがちで、母数(販売台数や走行台キロ)の文脈が抜け落ちます。

駐車中に出火したケース

米ルイジアナ州バトンルージュ(2016年)では、Huracánが駐車場で放火により全焼。消防は「複合材ボディが燃料に加担しやすい」とコメントし、明確に外的要因のケースでした。車両側の欠陥でなくとも、「ランボルギーニが燃えた」という一次情報だけが独り歩きする典型です。(https://www.wafb.com)また、ガソリンスタンド火災でHuracán Performanteが巻き込まれ全損となった例もあります。これも現場起因(給油設備側の火災)で、車両不具合と直結しません。(オートウィーク)

  • 「駐車中=車両不良」とは限らない(放火・外部火災の巻き込みが現実に存在)。(https://www.wafb.com)
  • 給油時は静電気・漏洩燃料の管理が最優先。現場要因の影響が極めて大きい。(オートウィーク)

海外での大規模リコール事例

Aventador(2012–2017)のEVAP対策(17V-073)は世界規模で、Aventador J/Venenoを含む5873台におよぶアップグレードでした。要点は「満タン+特定操舵・取り回しでEVAPに液体燃料が到達→未処理蒸気が高温ガスと接触」し得る、というメカニズムで、社外排気がリスク増と明言。(static.nhtsa.gov)Urus(2019–2020)は燃料クイックコネクターの耐熱を超える環境が起きうるとして部品交換(20V713)。(OEMDTC)Huracán(2020–2022 EVO/2022 STO)はギアオイル量不足→泡立ち→ベント漏れ→排気熱で着火リスクという流れを正面から潰す措置(22V-220)。

  • いずれも原因と対策が明文化され、無償修理が案内されています。未対策車は必ず入庫しましょう。(static.nhtsa.gov, OEMDTC)

スポーツカー特有のリスクと背景

車の炎上(出典:当サイト)

高出力エンジンによる熱問題

高比出力=高い発熱密度です。狭いエンジンベイでの冷却気流の設計は難易度が高く、低速域や停止後にはヒートソークが支配的になります。学術的にも、停車直後は放射・対流が主役となり、時間経過で寄与が移り変わることが示されています。これはレイアウトを問わず内燃機関車の共通課題で、スーパーカーは上限近い熱管理を迫られるぶん、マージンが薄くなる局面があるのです。(PMC, サイエンスダイレクト)

独自の設計やカスタムの影響

ミドシップは排気系が車体後端に近いため、停止時に熱が後部バンパー内外装・配線へ回りやすい設計上の特徴があります。さらに非承認の社外マフラーは排気流/熱負荷の分布を変え、Aventadorの公式通知でもリスク増が明記されています。「純正設計の熱バランスを崩さない」ことが肝心です。(static.nhtsa.gov)

他の高級スポーツカーでも見られる傾向

これはランボルギーニに固有の現象ではありません。McLarenは燃料タンク腐食による微小リーク→発火リスクで複数モデルを対象にリコールを出していますし、Ferrari California Tも燃料蒸気リーク→火災リスクでリコールが報じられています。高性能車は総じて熱・燃料・電装の境界管理が厳しく、各社が改良を重ねています。(オートウィーク, Yahoo Autos)

オーナーが取るべき予防策

車の炎上(出典:当サイト)

定期点検とメンテナンスの重要性

まずはリコール・サービスキャンペーンの消化が最優先です。Aventador(EVAP)/Urus(燃料コネクター)/Huracán(ギアオイル量)など、対象年式に当たる場合は即入庫が鉄則。燃料臭・MIL点灯・アイドリング不調といった兆候はAventador通知文に記載の警告サインで、「運転継続しない・搬送入庫」が公式指示です。(static.nhtsa.gov)定期点検では以下を重点チェックしましょう。

  • EVAP系・燃料ライン・クイックコネクターの滲み/劣化。(OEMDTC)
  • 排気遮熱板・耐熱スリーブ・配線被覆の熱劣化。(サイエンスダイレクト)
  • 油脂類の漏れ跡(ギアベント周辺を含む)。

燃料・オイル管理の徹底

満タン時の過充填(口ギリギリまで継ぎ足す行為)は厳禁。Aventadorのケースでは過充填がトリガーになり得ると明記されました。給油後に強い燃料臭があれば、その場で走行中止→搬送を徹底してください。(static.nhtsa.gov)
Huracánはトランスミッションオイル量が安全と信頼性の鍵。サーキット後や高負荷走行後は、漏れ跡や異音を点検し、整備記録に残す運用が安心です。

  • エンジン停止前に短時間のクールダウン走行でエンジンルームの温度勾配を緩める(一般論)。(sae.org)
  • 消火器の常備と使い方の共有(同乗者にも説明)。初期消火が被害規模を左右します。

走行環境や駐車環境への注意

都市部の路上は落下物・油膜が多く、排気系への付着が火種になりえます。給油所では静電気と可燃蒸気への配慮が必須です。さらに、長時間のアイドリング停車や高温アスファルトの路肩は、ヒートソークの観点でも好ましくありません。研究でも、停止直後の0–120秒に放射・対流が支配的であることが示されており、通風のある場所に停める意識が有効です。(オートウィーク, PMC)

  • 後部に可燃物(布・ビニール袋)を近づけない。
  • 駐車中のいたずら・放火対策として監視カメラのある場所や屋内保管を選ぶ。(https://www.wafb.com)
  • 後付けパーツは純正準拠の耐熱・遮熱設計を確認。(static.nhtsa.gov)

注意喚起

ランボルギーニ・ウラカン(出典:当サイト)

ランボルギーニに限らない高級車のリスク

McLarenの燃料タンク微小孔食や、Ferrari California Tの燃料蒸気漏れのリコールに見られるように、「熱×可燃液×電装」という三角形のリスクは高性能車に普遍的です。ブランドの優劣ではなく、高性能を詰め込んだ設計の難易度に起因する部分が大きい点を正しく理解しましょう。(オートウィーク, Yahoo Autos)

安全に楽しむための心構え

スーパーカーは性能が高いほど“管理”が重要です。リコール消化・定期点検・純正準拠の部品選び・走行後の温度管理・給油時の安全作法——この基本を守れば、過度に恐れる必要はありません。万一の際は初期消火を最優先に安全退避、原因特定は専門機関に委ねましょう。直感的な断定やSNS上の拡散は、再発防止に資するどころか、真因の解明を妨げることがあります。事実と手順に忠実であることこそ、スーパーカーを安全に楽しむ最短距離です。

最後に

ランボルギーニ・アヴェンタドールのイメージ(出典:当サイト)

火災リスクはブランドの優劣より、高性能を小さな空間に凝縮する設計難易度に起因します。リコール消化と計画的な点検、燃料・油脂・熱の丁寧な管理、適切な保管と装着部品の選定を徹底すれば、ランボルギーニは安心して楽しめます。誤解に惑わされず、事実と手順を積み重ねることが肝心です。

要点

  • ランボルギーニの車両火災は、高出力による熱、燃料系の漏れ・蒸気管理不良、電気系の短絡といった内的要因に、整備不良や外的要因が重なる“複合事象”として発生しやすいです。
  • 具体例として、AventadorのEVAP関連(17V-073)、Urusの燃料コネクター(20V713)、Huracánのギアオイル量(22V-220)などのリコールがあり、放火や給油所火災など車両外起因のケースも確認されています。
  • 予防には、全リコールの完了、定期点検での燃料・油脂・遮熱の重点確認、過充填回避やクールダウン走行、保管環境の防犯と換気、社外パーツの熱設計確認が有効です。

参考文献

  • NHTSA:Aventador 2012–2017(17V-073) リコール通知・FAQ(EVAP/過充填・社外排気でリスク増/世界台数5873)(static.nhtsa.gov)
  • NHTSA:Huracán EVO/STO(22V-220) ギアオイル量不足→ベント漏れ→排気熱で火災リスク
  • NHTSA/OEMDTC:Urus(20V713) 燃料クイックコネクター耐熱問題→新設計品交換 (OEMDTC)
  • 学術・技術資料:車両ヒートソーク/アンダーフード熱管理の研究(放射・対流の寄与、停止直後の熱挙動)(PMC, sae.org, サイエンスダイレクト)
  • 報道事例:Bengaluru Aventador(2025年8月) 人的被害なし・原因未特定、ボストンHuracán(2018年) など (The Times of India, www.ndtv.com, The Drive)
  • 他社例:McLaren燃料タンク関連の火災リスク、Ferrari California Tの燃料蒸気漏れリコール (オートウィーク, Yahoo Autos)

本記事は公的機関のリコール資料・学術論文・一次報道を中心に構成し、具体的因果の断定が困難なケースでは「未特定」と明記しています。オーナーの皆さまは、まず車台番号でのリコール確認とディーラー点検を最優先に実行してください。

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